細隙灯顕微鏡(前眼/後眼部)検査
角膜前眼部・後眼部検査
細隙灯顕微鏡検査(さいげきとうけんびきょうけんさ)について
細隙灯という特殊な顕微鏡を用いて、細い帯状の光を目に当て、角膜、結膜、虹彩、瞳孔、水晶体といった目の前の方の部分(前眼部)を拡大して詳しく観察する検査です。特殊なレンズを用いることで、目の奥の部分(後極部、硝子体や網膜など)の状態を観察することも可能です。
検査の原理
細隙灯は、強い光源と顕微鏡が一体になった装置です。細いスリット状の光を当てることで、目の組織の断面を照らし出し、顕微鏡を通して立体的に観察することができます。光の当て方や観察の角度を変えることで、様々な目の構造や状態を詳細に評価できます。
この検査で何がわかるのか
この検査によって、以下のような目の異常や状態を知ることができます。
・目の表面の異常: 角膜の傷、炎症、乾燥、結膜の炎症(充血、腫れ)、異物など
・前眼部の異常: 虹彩の炎症、瞳孔の異常、前房内の炎症細胞や混濁など
・水晶体の異常: 白内障の程度や種類、水晶体の濁りなど
・硝子体の異常: 硝子体の混濁(飛蚊症の原因など)
・その他: コンタクトレンズの適合状態の評価など
検査の実際
・患者さんは細隙灯の前に座り、顎と額を固定する台に置きます。
・検査を行う医師は、細隙灯を通して患者さんの目を観察します。
・細い帯状の光が様々な角度や幅で目に当てられ、目の各部分が詳しく観察されます。
・目の表面の状態をより詳しく調べるために、フルオレセインという染色液を点眼することがあります。この染色液は、角膜の傷などを黄色く染め出すため、傷の有無や範囲がわかりやすくなります。
・場合によっては、瞳を大きく開く目薬(散瞳薬)を使用して、より奥の部分を観察することがあります。
検査を受ける際の注意点
・検査自体に痛みはほとんどありませんが、光が少し眩しく感じることがあります。
・散瞳薬を使用した場合は、検査後しばらくの間、目が眩しかったり、ピントが合いにくくなったりすることがあります。そのため、検査後の運転は控えるように指示されることがあります。
細隙灯顕微鏡検査は、多くの目の病気の診断や治療経過の観察に不可欠な検査です。もし検査を受ける際には、医師やスタッフの説明をよく聞き、安心して臨んでください。
細隙灯という特殊な顕微鏡を用いて、細い帯状の光を目に当て、角膜、結膜、虹彩、瞳孔、水晶体といった目の前の方の部分(前眼部)を拡大して詳しく観察する検査です。特殊なレンズを用いることで、目の奥の部分(後極部、硝子体や網膜など)の状態を観察することも可能です。
検査の原理
細隙灯は、強い光源と顕微鏡が一体になった装置です。細いスリット状の光を当てることで、目の組織の断面を照らし出し、顕微鏡を通して立体的に観察することができます。光の当て方や観察の角度を変えることで、様々な目の構造や状態を詳細に評価できます。
この検査で何がわかるのか
この検査によって、以下のような目の異常や状態を知ることができます。
・目の表面の異常: 角膜の傷、炎症、乾燥、結膜の炎症(充血、腫れ)、異物など
・前眼部の異常: 虹彩の炎症、瞳孔の異常、前房内の炎症細胞や混濁など
・水晶体の異常: 白内障の程度や種類、水晶体の濁りなど
・硝子体の異常: 硝子体の混濁(飛蚊症の原因など)
・その他: コンタクトレンズの適合状態の評価など
検査の実際
・患者さんは細隙灯の前に座り、顎と額を固定する台に置きます。
・検査を行う医師は、細隙灯を通して患者さんの目を観察します。
・細い帯状の光が様々な角度や幅で目に当てられ、目の各部分が詳しく観察されます。
・目の表面の状態をより詳しく調べるために、フルオレセインという染色液を点眼することがあります。この染色液は、角膜の傷などを黄色く染め出すため、傷の有無や範囲がわかりやすくなります。
・場合によっては、瞳を大きく開く目薬(散瞳薬)を使用して、より奥の部分を観察することがあります。
検査を受ける際の注意点
・検査自体に痛みはほとんどありませんが、光が少し眩しく感じることがあります。
・散瞳薬を使用した場合は、検査後しばらくの間、目が眩しかったり、ピントが合いにくくなったりすることがあります。そのため、検査後の運転は控えるように指示されることがあります。
細隙灯顕微鏡検査は、多くの目の病気の診断や治療経過の観察に不可欠な検査です。もし検査を受ける際には、医師やスタッフの説明をよく聞き、安心して臨んでください。
角膜構造について
角膜上皮細胞
角膜上皮細胞について
角膜上皮細胞は、眼の表面にある透明な層である角膜の一番外側の層を構成する細胞です。
角膜の構造
角膜は、外側から順に以下の5つの層で構成されています。
・角膜上皮:外界と接する最外層
・ボーマン膜:角膜上皮のすぐ下にある薄い膜
・角膜実質:角膜の大部分を占めるコラーゲン線維の層
・デスメ膜:角膜実質のすぐ下にある薄い膜
・角膜内皮:最も内側の単層の細胞層
角膜上皮細胞の機能
角膜上皮は、厚さ約50μmの重層扁平上皮であり、以下の重要な機能を担っています。
・保護:外界からの細菌、異物、化学物質などの侵入を防ぎ、眼球内を保護します。
・平滑な表面の維持:涙液を保持し、光を均一に透過させるための滑らかで透明な表面を維持します。これにより、良好な視力を保つことができます。
・感覚神経の終末:豊富な知覚神経終末が存在し、触覚、温度覚、痛覚などの刺激を感じ取ります。
・再生:表面が傷ついた場合でも、角膜輪部にある角膜上皮幹細胞からの供給により、比較的速やかに再生します(ターンオーバーは約7~10日)。
角膜上皮幹細胞
角膜と結膜の境界にある角膜輪部には、角膜上皮細胞を生み出す角膜上皮幹細胞が存在します。この幹細胞が分裂・増殖することで、常に新しい角膜上皮細胞が供給され、角膜上皮の健康が維持されています。角膜上皮幹細胞が損傷すると、角膜上皮の再生がうまくいかなくなり、視力障害などを引き起こす可能性があります(角膜上皮幹細胞疲弊症)。
角膜上皮に関する近年の研究
近年では、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から角膜上皮細胞を作製し、角膜上皮幹細胞疲弊症の患者に移植する臨床研究が進められています。これらの研究では、安全性と有効性が示唆されており、将来的な治療法としての期待が高まっています。
角膜上皮細胞は、眼の表面にある透明な層である角膜の一番外側の層を構成する細胞です。
角膜の構造
角膜は、外側から順に以下の5つの層で構成されています。
・角膜上皮:外界と接する最外層
・ボーマン膜:角膜上皮のすぐ下にある薄い膜
・角膜実質:角膜の大部分を占めるコラーゲン線維の層
・デスメ膜:角膜実質のすぐ下にある薄い膜
・角膜内皮:最も内側の単層の細胞層
角膜上皮細胞の機能
角膜上皮は、厚さ約50μmの重層扁平上皮であり、以下の重要な機能を担っています。
・保護:外界からの細菌、異物、化学物質などの侵入を防ぎ、眼球内を保護します。
・平滑な表面の維持:涙液を保持し、光を均一に透過させるための滑らかで透明な表面を維持します。これにより、良好な視力を保つことができます。
・感覚神経の終末:豊富な知覚神経終末が存在し、触覚、温度覚、痛覚などの刺激を感じ取ります。
・再生:表面が傷ついた場合でも、角膜輪部にある角膜上皮幹細胞からの供給により、比較的速やかに再生します(ターンオーバーは約7~10日)。
角膜上皮幹細胞
角膜と結膜の境界にある角膜輪部には、角膜上皮細胞を生み出す角膜上皮幹細胞が存在します。この幹細胞が分裂・増殖することで、常に新しい角膜上皮細胞が供給され、角膜上皮の健康が維持されています。角膜上皮幹細胞が損傷すると、角膜上皮の再生がうまくいかなくなり、視力障害などを引き起こす可能性があります(角膜上皮幹細胞疲弊症)。
角膜上皮に関する近年の研究
近年では、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から角膜上皮細胞を作製し、角膜上皮幹細胞疲弊症の患者に移植する臨床研究が進められています。これらの研究では、安全性と有効性が示唆されており、将来的な治療法としての期待が高まっています。
角膜実質細胞
角膜実質細胞は、角膜の中間層である角膜実質を構成する主要な細胞です。
角膜実質は、角膜の厚さの約90%を占めており、規則正しく配列したコラーゲン線維と、その間を埋める基質、そして角膜実質細胞から構成されています。
角膜実質細胞の主な役割
・コラーゲン線維と基質の維持: 角膜実質細胞は、角膜の透明性を維持するために重要なコラーゲン線維と基質を産生・維持しています。コラーゲン線維が規則正しく配列することで、光が散乱することなく通過し、透明な状態が保たれます。
・創傷治癒: 角膜に傷がついた場合、角膜実質細胞は活性化し、増殖・遊走して傷口を修復します。この過程で、新しいコラーゲンや基質を合成し、組織を再生させます。
・免疫応答: 角膜実質細胞は、免疫応答にも関与しています。外部から侵入した微生物などを認識し、炎症性サイトカインなどを産生することで、初期の感染防御に役立ちます。
・水分調節: 角膜内皮細胞と協力して、角膜の水分量を適切に保つ役割も担っています。
角膜実質細胞の特性
・通常は分裂・増殖をほとんど行いませんが、角膜に損傷を受けると活性化して分裂能を獲得します。
・一度損傷すると再生しにくい性質を持ちます。レーシックなどの屈折矯正手術では、この角膜実質にレーザーを照射して角膜の形状を変化させます。
角膜実質細胞は、角膜の透明性の維持、創傷治癒、免疫応答など、目の機能を維持する上で非常に重要な役割を果たしています。
デスメ膜;Desceme細胞
デスメ膜(Descemet's membrane)
デスメ膜は、角膜の最も内側の層にある薄い膜状の構造です。角膜は外側から順に、角膜上皮、ボーマン膜、角膜実質、デスメ膜、角膜内皮細胞の5層で構成されています。
デスメ膜の主な特徴は以下の通りです。
・角膜実質と角膜内皮細胞を隔てる基底膜としての役割を持ちます。
・コラーゲン線維を主成分としており、比較的丈夫な構造をしています。
・均一で無構造に見えますが、電子顕微鏡で観察すると細い線維状の構造物から構成されていることが分かっています。
・厚さは約2.5〜3.0マイクロメートル程度です。
・角膜内皮細胞が産生します。
デスメ膜は、角膜の構造的な支持や、角膜内皮細胞の足場としての役割を果たしています。また、角膜に傷ができた際に、再生を促す働きもすると考えられています。
臨床的には、角膜の深い部分の病変や手術などにおいて、デスメ膜が関わることがあります。例えば、角膜潰瘍が進行するとデスメ膜が突出するデスメ膜瘤という状態になることがあります。また、角膜移植手術の一種である**デスメ膜内皮移植(DMEK)**は、デスメ膜と角膜内皮細胞を一緒に移植する方法です。
デスメ細胞(Descemet's cells)
「デスメ細胞」という独立した名称の細胞は、一般的には使用されません。
角膜の最も内側に位置し、デスメ膜のすぐ内側にある細胞層は**角膜内皮細胞(corneal endothelial cells)**と呼ばれます。
角膜内皮細胞は、以下のような重要な役割を担っています。
・角膜内の水分を房水中に汲み出すポンプ機能を持ち、角膜の水分量を一定に保つことで透明性を維持しています。
・六角形の細胞が一層にシート状に並んだ構造をしています。
・厚さは約5〜10マイクロメートルです。
・生まれた時の数が決まっており、分裂・再生する能力がほとんどありません。加齢とともに徐々に減少していきます。
このように、デスメ膜と密接に関連している細胞は「デスメ細胞」ではなく「角膜内皮細胞」です。角膜内皮細胞は、角膜の透明性を維持する上で非常に重要な細胞であり、その機能が低下すると角膜の透明性が失われ、視力障害を引き起こす可能性があります。
デスメ膜は、角膜の最も内側の層にある薄い膜状の構造です。角膜は外側から順に、角膜上皮、ボーマン膜、角膜実質、デスメ膜、角膜内皮細胞の5層で構成されています。
デスメ膜の主な特徴は以下の通りです。
・角膜実質と角膜内皮細胞を隔てる基底膜としての役割を持ちます。
・コラーゲン線維を主成分としており、比較的丈夫な構造をしています。
・均一で無構造に見えますが、電子顕微鏡で観察すると細い線維状の構造物から構成されていることが分かっています。
・厚さは約2.5〜3.0マイクロメートル程度です。
・角膜内皮細胞が産生します。
デスメ膜は、角膜の構造的な支持や、角膜内皮細胞の足場としての役割を果たしています。また、角膜に傷ができた際に、再生を促す働きもすると考えられています。
臨床的には、角膜の深い部分の病変や手術などにおいて、デスメ膜が関わることがあります。例えば、角膜潰瘍が進行するとデスメ膜が突出するデスメ膜瘤という状態になることがあります。また、角膜移植手術の一種である**デスメ膜内皮移植(DMEK)**は、デスメ膜と角膜内皮細胞を一緒に移植する方法です。
デスメ細胞(Descemet's cells)
「デスメ細胞」という独立した名称の細胞は、一般的には使用されません。
角膜の最も内側に位置し、デスメ膜のすぐ内側にある細胞層は**角膜内皮細胞(corneal endothelial cells)**と呼ばれます。
角膜内皮細胞は、以下のような重要な役割を担っています。
・角膜内の水分を房水中に汲み出すポンプ機能を持ち、角膜の水分量を一定に保つことで透明性を維持しています。
・六角形の細胞が一層にシート状に並んだ構造をしています。
・厚さは約5〜10マイクロメートルです。
・生まれた時の数が決まっており、分裂・再生する能力がほとんどありません。加齢とともに徐々に減少していきます。
このように、デスメ膜と密接に関連している細胞は「デスメ細胞」ではなく「角膜内皮細胞」です。角膜内皮細胞は、角膜の透明性を維持する上で非常に重要な細胞であり、その機能が低下すると角膜の透明性が失われ、視力障害を引き起こす可能性があります。
角膜内皮膜細胞
角膜内皮細胞とは
角膜は、いわゆる「黒目」の部分で、光を眼球内に取り入れ、屈折させる役割を持つ透明な膜です。
この角膜は5つの層からできており、その一番内側にあるのが「角膜内皮細胞」です。
角膜内皮細胞の機能
角膜内皮細胞の最も重要な役割は、角膜の透明性を維持することです。角膜は水分を多く含む組織ですが、この細胞が「ポンプ機能」を果たすことで、角膜内の水分量を適切に保ち、余分な水分を排出しています。このポンプ機能が正常に働くことで、角膜は透明な状態を維持し、クリアな視界が保たれます。
角膜内皮細胞の特性
・再生しない: 一度死んでしまった角膜内皮細胞は、残念ながら再生することはありません。そのため、減少すると、残りの細胞が大きくなってその隙間を埋めようとしますが、数が大幅に減少するとポンプ機能が低下してしまいます。
・細胞密度: 正常な角膜内皮細胞は、1平方ミリメートルあたり約2500~3000個の六角形の細胞が規則正しく並んでいます。
・2000個/mm²以下になると、コンタクトレンズの装用を控えることが推奨されます。
・1000個/mm²を下回ると、正常な機能を維持できなくなり、角膜が濁り始めます。
・400~500個/mm²以下になると、「水疱性角膜症」という状態になり、角膜が著しく濁り、視力低下や痛みが生じ、角膜移植が必要になることがあります。
角膜内皮細胞が減少する原因
・加齢: 自然な加齢によっても少しずつ減少していきます。
・コンタクトレンズの長期装用: 特に酸素透過性の低いコンタクトレンズを長期間使用したり、適切なケアを怠ったりすると、角膜への酸素供給が不足し、内皮細胞の減少を早めることがあります。
・目の手術: 白内障手術などの眼科手術によっても、一時的に内皮細胞が減少することがあります。
・眼外傷: 目に強い衝撃や傷を受けると、内皮細胞が損傷することがあります。
・目の炎症や疾患: ぶどう膜炎などの目の炎症や、緑内障発作、先天性・遺伝性の疾患なども原因となることがあります。
・糖尿病: 糖尿病も角膜内皮細胞の減少と関連があるという報告があります。
角膜内皮細胞の減少による影響
・角膜の濁り: ポンプ機能が低下し、角膜に水分がたまってむくみ(角膜浮腫)が生じ、角膜が白く濁ってきます。
・視力低下: 角膜が濁ることで光が正常に眼の奥に届かず、見えにくくなったり、視力が低下したりします。
・痛み: 重症化すると、角膜の表面に水疱ができ、激しい痛みを伴うことがあります。
・白内障手術への影響: 内皮細胞の数が極端に少ない場合、白内障手術後に角膜が濁ってしまうリスクが高まるため、手術が難しくなることがあります。場合によっては、白内障手術の前に角膜移植が必要になることもあります。
治療と再生医療
一度減少した角膜内皮細胞は再生しないため、現在のところ根本的な治療は限られています。進行して重度の視力障害や痛みが生じた場合の最終的な治療法は角膜移植です。しかし、近年では、減少した角膜内皮細胞を増殖させ、角膜に注入したり、シート状にして移植したりする再生医療の研究が進められています。Rhoキナーゼ阻害剤を用いた点眼薬や、iPS細胞由来の角膜内皮細胞の臨床研究なども行われており、今後の発展が期待されています。
目の健康を守るためには、定期的な眼科検診で角膜内皮細胞の数をチェックしてもらうことが重要です。
特にコンタクトレンズを使用している方は、適切な使用方法を守り、定期的な検査を受けるようにしましょう。
角膜は、いわゆる「黒目」の部分で、光を眼球内に取り入れ、屈折させる役割を持つ透明な膜です。
この角膜は5つの層からできており、その一番内側にあるのが「角膜内皮細胞」です。
角膜内皮細胞の機能
角膜内皮細胞の最も重要な役割は、角膜の透明性を維持することです。角膜は水分を多く含む組織ですが、この細胞が「ポンプ機能」を果たすことで、角膜内の水分量を適切に保ち、余分な水分を排出しています。このポンプ機能が正常に働くことで、角膜は透明な状態を維持し、クリアな視界が保たれます。
角膜内皮細胞の特性
・再生しない: 一度死んでしまった角膜内皮細胞は、残念ながら再生することはありません。そのため、減少すると、残りの細胞が大きくなってその隙間を埋めようとしますが、数が大幅に減少するとポンプ機能が低下してしまいます。
・細胞密度: 正常な角膜内皮細胞は、1平方ミリメートルあたり約2500~3000個の六角形の細胞が規則正しく並んでいます。
・2000個/mm²以下になると、コンタクトレンズの装用を控えることが推奨されます。
・1000個/mm²を下回ると、正常な機能を維持できなくなり、角膜が濁り始めます。
・400~500個/mm²以下になると、「水疱性角膜症」という状態になり、角膜が著しく濁り、視力低下や痛みが生じ、角膜移植が必要になることがあります。
角膜内皮細胞が減少する原因
・加齢: 自然な加齢によっても少しずつ減少していきます。
・コンタクトレンズの長期装用: 特に酸素透過性の低いコンタクトレンズを長期間使用したり、適切なケアを怠ったりすると、角膜への酸素供給が不足し、内皮細胞の減少を早めることがあります。
・目の手術: 白内障手術などの眼科手術によっても、一時的に内皮細胞が減少することがあります。
・眼外傷: 目に強い衝撃や傷を受けると、内皮細胞が損傷することがあります。
・目の炎症や疾患: ぶどう膜炎などの目の炎症や、緑内障発作、先天性・遺伝性の疾患なども原因となることがあります。
・糖尿病: 糖尿病も角膜内皮細胞の減少と関連があるという報告があります。
角膜内皮細胞の減少による影響
・角膜の濁り: ポンプ機能が低下し、角膜に水分がたまってむくみ(角膜浮腫)が生じ、角膜が白く濁ってきます。
・視力低下: 角膜が濁ることで光が正常に眼の奥に届かず、見えにくくなったり、視力が低下したりします。
・痛み: 重症化すると、角膜の表面に水疱ができ、激しい痛みを伴うことがあります。
・白内障手術への影響: 内皮細胞の数が極端に少ない場合、白内障手術後に角膜が濁ってしまうリスクが高まるため、手術が難しくなることがあります。場合によっては、白内障手術の前に角膜移植が必要になることもあります。
治療と再生医療
一度減少した角膜内皮細胞は再生しないため、現在のところ根本的な治療は限られています。進行して重度の視力障害や痛みが生じた場合の最終的な治療法は角膜移植です。しかし、近年では、減少した角膜内皮細胞を増殖させ、角膜に注入したり、シート状にして移植したりする再生医療の研究が進められています。Rhoキナーゼ阻害剤を用いた点眼薬や、iPS細胞由来の角膜内皮細胞の臨床研究なども行われており、今後の発展が期待されています。
目の健康を守るためには、定期的な眼科検診で角膜内皮細胞の数をチェックしてもらうことが重要です。
特にコンタクトレンズを使用している方は、適切な使用方法を守り、定期的な検査を受けるようにしましょう。
コンタクトレンズと目の病気について
コンタクトレンズは視力を矯正する便利な医療機器ですが、使い方を誤ると様々な目の病気を引き起こす可能性があります。
特に、直接目に触れるものであるため、注意が必要です。
コンタクトレンズに関連する主な目の病気
コンタクトレンズの使用によって起こりうる目の病気には、以下のようなものがあります。
角膜疾患
角膜上皮障害(点状表層角膜症、角膜びらんなど):
・原因: 長時間装用による酸素不足、レンズの汚れ、レンズと角膜の摩擦、ドライアイなどが原因で、角膜の表面に小さな傷がついたり、細胞が剥がれたりします。
・症状: ゴロゴロ感(異物感)、痛み、充血、かすみ、まぶしさ、目やになど。軽度であれば数日で治ることもありますが、放置すると感染症につながる危険があります。
感染性角膜炎(細菌性角膜炎、真菌性角膜炎、アカントアメーバ角膜炎など)
・原因: 角膜の傷から細菌、カビ、アメーバなどの微生物が侵入して感染を起こします。不適切なレンズケア(こすり洗いの不足、洗浄液の使い回し、水道水での洗浄)、装用期間の超過、つけっぱなしでの就寝、不衛生なレンズケースの使用などが主な原因です。
・症状: 強い目の痛み、充血、目やに、まぶしさ、視力低下、角膜の混濁(白く濁る)など。重症化すると視力障害が残ったり、最悪の場合失明に至ることもあります。特にアカントアメーバ角膜炎は治療が非常に困難なことが多いです。
角膜内皮障害(水疱性角膜症など)
・原因: 長期間のコンタクトレンズ装用による慢性的な酸素不足が主な原因です。角膜の透明性を保つ重要な役割を担う角膜内皮細胞が減少・変形し、角膜がむくんで透明性が失われます。角膜内皮細胞は一度減少すると再生しないため、進行すると角膜移植が必要になる場合があります。
症状
初期には自覚症状がないことが多いですが、進行すると角膜が白く濁り、視界がかすんだり、強い痛みを感じたりすることがあります。
角膜浮腫
・原因: 角膜のむくみです。酸素不足などが原因で起こります。
・症状: 視界が少しぼやける程度で、レンズの種類や装用方法を見直すことで改善することが多いです。
角膜血管新生
・原因: 重度の酸素不足が続くと、通常は血管のない角膜に血管が伸びてくることがあります。
・症状: 自覚症状がないこともありますが、進行すると視力低下につながることがあります。酸素不足のサインであり、レンズ装用の中止や装用時間の短縮が必要となります。
結膜疾患
巨大乳頭結膜炎:
・原因: レンズに付着したタンパク質などの汚れがアレルギー反応を引き起こし、上まぶたの裏側にある結膜に炎症が起こり、ぶつぶつ(乳頭)ができます。
症状 目のかゆみ、目やにの増加、レンズのずれ、異物感など。
その他
ドライアイ: コンタクトレンズの装用自体が涙液の蒸発を促進し、ドライアイを引き起こしたり悪化させたりすることがあります。
・角膜の老化促進: コンタクトレンズの長期使用は、角膜内皮細胞の減少を加速させ、角膜の老化を促進する可能性が指摘されています。
予防と安全な使用のための重要事項
これらの目の病気を防ぎ、コンタクトレンズを安全に使用するためには、以下の点が非常に重要です。
・眼科医の処方と指示の遵守: コンタクトレンズは高度管理医療機器です。必ず眼科を受診し、自分の目に合ったレンズを処方してもらい、眼科医の指示された装用時間やケア方法を厳守しましょう。
正しいレンズケアの徹底
・レンズに触れる前は必ず石鹸で手を洗い、清潔に保つ。
・指定された洗浄液を使い、こすり洗いやすすぎを徹底する。
・洗浄液の使い回しや継ぎ足し、水道水の使用は絶対に避ける。
・レンズケースも毎日洗い、乾燥させ、定期的に新しいものに交換する。
装用時間・交換サイクルの厳守:
決められた装用時間を守り、つけっぱなしでの就寝は避ける。
ワンデータイプは再利用せず、2ウィークタイプなども交換サイクルを守って使用する。
定期的な眼科検診
自覚症状がなくても、目の状態は日々変化しています。必ず定期的に眼科を受診し、目の健康状態やレンズの適合性を確認してもらいましょう。異常の早期発見につながります。
異常を感じたらすぐに受診:
痛み、充血、かすみ、目やになど、目に少しでも異変を感じたら、すぐにレンズを外し、眼科を受診してください。自己判断で対処しないことが重要です。
不適切なレンズの使用を避ける
特にインターネットなどで安価に購入できる粗悪なカラーコンタクトレンズなどは、品質が不十分で目に大きな負担をかけることがあります。必ず眼科医の処方のもと、安全性の高いレンズを選びましょう。
コンタクトレンズは非常に便利なものですが、「目に異物を入れている」という意識を常に持ち、目の健康を第一に考えて正しく使用することが何よりも大切です。
特に、直接目に触れるものであるため、注意が必要です。
コンタクトレンズに関連する主な目の病気
コンタクトレンズの使用によって起こりうる目の病気には、以下のようなものがあります。
角膜疾患
角膜上皮障害(点状表層角膜症、角膜びらんなど):
・原因: 長時間装用による酸素不足、レンズの汚れ、レンズと角膜の摩擦、ドライアイなどが原因で、角膜の表面に小さな傷がついたり、細胞が剥がれたりします。
・症状: ゴロゴロ感(異物感)、痛み、充血、かすみ、まぶしさ、目やになど。軽度であれば数日で治ることもありますが、放置すると感染症につながる危険があります。
感染性角膜炎(細菌性角膜炎、真菌性角膜炎、アカントアメーバ角膜炎など)
・原因: 角膜の傷から細菌、カビ、アメーバなどの微生物が侵入して感染を起こします。不適切なレンズケア(こすり洗いの不足、洗浄液の使い回し、水道水での洗浄)、装用期間の超過、つけっぱなしでの就寝、不衛生なレンズケースの使用などが主な原因です。
・症状: 強い目の痛み、充血、目やに、まぶしさ、視力低下、角膜の混濁(白く濁る)など。重症化すると視力障害が残ったり、最悪の場合失明に至ることもあります。特にアカントアメーバ角膜炎は治療が非常に困難なことが多いです。
角膜内皮障害(水疱性角膜症など)
・原因: 長期間のコンタクトレンズ装用による慢性的な酸素不足が主な原因です。角膜の透明性を保つ重要な役割を担う角膜内皮細胞が減少・変形し、角膜がむくんで透明性が失われます。角膜内皮細胞は一度減少すると再生しないため、進行すると角膜移植が必要になる場合があります。
症状
初期には自覚症状がないことが多いですが、進行すると角膜が白く濁り、視界がかすんだり、強い痛みを感じたりすることがあります。
角膜浮腫
・原因: 角膜のむくみです。酸素不足などが原因で起こります。
・症状: 視界が少しぼやける程度で、レンズの種類や装用方法を見直すことで改善することが多いです。
角膜血管新生
・原因: 重度の酸素不足が続くと、通常は血管のない角膜に血管が伸びてくることがあります。
・症状: 自覚症状がないこともありますが、進行すると視力低下につながることがあります。酸素不足のサインであり、レンズ装用の中止や装用時間の短縮が必要となります。
結膜疾患
巨大乳頭結膜炎:
・原因: レンズに付着したタンパク質などの汚れがアレルギー反応を引き起こし、上まぶたの裏側にある結膜に炎症が起こり、ぶつぶつ(乳頭)ができます。
症状 目のかゆみ、目やにの増加、レンズのずれ、異物感など。
その他
ドライアイ: コンタクトレンズの装用自体が涙液の蒸発を促進し、ドライアイを引き起こしたり悪化させたりすることがあります。
・角膜の老化促進: コンタクトレンズの長期使用は、角膜内皮細胞の減少を加速させ、角膜の老化を促進する可能性が指摘されています。
予防と安全な使用のための重要事項
これらの目の病気を防ぎ、コンタクトレンズを安全に使用するためには、以下の点が非常に重要です。
・眼科医の処方と指示の遵守: コンタクトレンズは高度管理医療機器です。必ず眼科を受診し、自分の目に合ったレンズを処方してもらい、眼科医の指示された装用時間やケア方法を厳守しましょう。
正しいレンズケアの徹底
・レンズに触れる前は必ず石鹸で手を洗い、清潔に保つ。
・指定された洗浄液を使い、こすり洗いやすすぎを徹底する。
・洗浄液の使い回しや継ぎ足し、水道水の使用は絶対に避ける。
・レンズケースも毎日洗い、乾燥させ、定期的に新しいものに交換する。
装用時間・交換サイクルの厳守:
決められた装用時間を守り、つけっぱなしでの就寝は避ける。
ワンデータイプは再利用せず、2ウィークタイプなども交換サイクルを守って使用する。
定期的な眼科検診
自覚症状がなくても、目の状態は日々変化しています。必ず定期的に眼科を受診し、目の健康状態やレンズの適合性を確認してもらいましょう。異常の早期発見につながります。
異常を感じたらすぐに受診:
痛み、充血、かすみ、目やになど、目に少しでも異変を感じたら、すぐにレンズを外し、眼科を受診してください。自己判断で対処しないことが重要です。
不適切なレンズの使用を避ける
特にインターネットなどで安価に購入できる粗悪なカラーコンタクトレンズなどは、品質が不十分で目に大きな負担をかけることがあります。必ず眼科医の処方のもと、安全性の高いレンズを選びましょう。
コンタクトレンズは非常に便利なものですが、「目に異物を入れている」という意識を常に持ち、目の健康を第一に考えて正しく使用することが何よりも大切です。
涙の知識
涙は、私たちの目の健康を保ち、感情を表現する上で非常に重要な役割を果たす液体です。その成分、種類、生成メカニズム、そして役割について詳しく見ていきましょう。
「涙の成分」
涙の原料は血液です。涙腺内で血液から血球(赤血球、白血球、血小板など)が取り除かれ、液体成分が主になります。約9割以上が水で構成されていますが、その他にも様々な成分が含まれています。
水分(水層): 主に涙腺から分泌される涙の大部分を占めます。血液を原料にして作られます。
電解質: ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、重炭酸イオン(HCO3)、塩化物イオン(Cl)などが含まれます。
タンパク質
・ラクトフェリン: 抗菌作用があります。
・リゾチーム: 細菌の細胞壁を破壊する酵素で、殺菌作用があります。
・分泌型ムチン: 水層と混ざり合い、涙の粘性に関与します。
・免疫グロブリン(IgAなど): 免疫防御に関わります。
・グロブリン: 様々な生理活性を持ちます。
・細胞活性因子: 目の表面の細胞の再生を助けます。
栄養素: アミノ酸、ブドウ糖、ビタミンAなどが含まれ、角膜や結膜に栄養を供給します。
酵素: 抗酸化作用を持つものもあります。
油分(油層): まぶたの縁にあるマイボーム腺から分泌されます。涙の最も外側に薄い油膜を形成し、涙の蒸発を防ぐ役割があります。
ムチン(ムチン層): 角結膜の杯細胞(ゴブレット細胞)から分泌される分泌型ムチンと、涙を浸透させる土台となる膜型ムチンがあります。以前は独立した層と考えられていましたが、分泌型ムチンは水層と混ざり合っており、水層と目の表面を安定して覆う役割を担っています。これにより、本来水をはじく性質のある目の表面を親水性にし、涙を目の表面に保持します。
「涙の種類と役割」
涙は、その分泌される目的や状況によって大きく3つの種類に分けられます。
基礎分泌の涙(基礎涙液)
役割: 常に目の表面に分泌されている涙で、目の乾燥を防ぎ、目の表面を保護します。また、角膜や結膜に酸素や栄養を供給し、老廃物を洗い流す役割も担っています。細菌感染を防ぐ抗菌成分も含まれています。
特徴: 24時間365日、絶えず分泌されています。
反射性分泌の涙(反射性涙液)
役割: 目にゴミや異物が入った時、玉ねぎの刺激、強い光、煙、乾燥などの外部からの刺激に対して反射的に分泌される涙です。異物を洗い流し、目を保護する役割があります。
特徴: 大脳辺縁系にある扁桃体などを介して、刺激に反応して分泌されます。
情動性分泌の涙(感情性流涙液):
役割: 悲しい、嬉しい、感動したなど、感情が高ぶった時に流れる涙です。人間特有のもので、ストレスを軽減する効果があると言われています。ストレスホルモンであるコルチゾールなどが涙の中に排出されることで、泣いた後に気分がすっきりするとされています。
特徴: 自律神経(特に副交感神経)が関係しており、交感神経が優位な怒りや悔しい時の涙はナトリウムが多くしょっぱい傾向があり、副交感神経が優位な嬉しい時や悲しい時の涙は水っぽく薄い味の傾向があると言われています。
涙の生成と排出のメカニズム
涙は主に以下のプロセスで生成され、排出されます。
生成:
涙腺: 上まぶたの外側にある主涙腺と、結膜に点在する副涙腺で血液を原料に涙が作られます。
・マイボーム腺: まぶたの縁にあるマイボーム腺から油分が分泌されます。
・杯細胞: 角結膜にある杯細胞からムチンが分泌されます。
分布: 涙腺から分泌された涙は、まばたきによって目の表面全体に均一に広がり、涙の膜を形成します。この涙の膜は、油層、水層、ムチン層からなる3層構造です。
排出:
・目の表面を潤した涙の約10%は蒸発します。
・残りの涙は、目頭の上下にある「涙点」と呼ばれる小さな穴に吸い込まれます。
・涙点は「涙小管」につながっており、さらに「涙嚢(るいのう)」という涙を一時的にためる袋を通り、「鼻涙管(びるいかん)」を通って鼻腔(鼻の奥)へと排出されます。
・泣いた時に鼻水が出るのは、この涙が鼻に流れているためです。
このように、涙は単なる水ではなく、様々な成分と役割を持つ複雑な液体であり、私たちの目の健康と心の状態に深く関わっています。
「涙の成分」
涙の原料は血液です。涙腺内で血液から血球(赤血球、白血球、血小板など)が取り除かれ、液体成分が主になります。約9割以上が水で構成されていますが、その他にも様々な成分が含まれています。
水分(水層): 主に涙腺から分泌される涙の大部分を占めます。血液を原料にして作られます。
電解質: ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、重炭酸イオン(HCO3)、塩化物イオン(Cl)などが含まれます。
タンパク質
・ラクトフェリン: 抗菌作用があります。
・リゾチーム: 細菌の細胞壁を破壊する酵素で、殺菌作用があります。
・分泌型ムチン: 水層と混ざり合い、涙の粘性に関与します。
・免疫グロブリン(IgAなど): 免疫防御に関わります。
・グロブリン: 様々な生理活性を持ちます。
・細胞活性因子: 目の表面の細胞の再生を助けます。
栄養素: アミノ酸、ブドウ糖、ビタミンAなどが含まれ、角膜や結膜に栄養を供給します。
酵素: 抗酸化作用を持つものもあります。
油分(油層): まぶたの縁にあるマイボーム腺から分泌されます。涙の最も外側に薄い油膜を形成し、涙の蒸発を防ぐ役割があります。
ムチン(ムチン層): 角結膜の杯細胞(ゴブレット細胞)から分泌される分泌型ムチンと、涙を浸透させる土台となる膜型ムチンがあります。以前は独立した層と考えられていましたが、分泌型ムチンは水層と混ざり合っており、水層と目の表面を安定して覆う役割を担っています。これにより、本来水をはじく性質のある目の表面を親水性にし、涙を目の表面に保持します。
「涙の種類と役割」
涙は、その分泌される目的や状況によって大きく3つの種類に分けられます。
基礎分泌の涙(基礎涙液)
役割: 常に目の表面に分泌されている涙で、目の乾燥を防ぎ、目の表面を保護します。また、角膜や結膜に酸素や栄養を供給し、老廃物を洗い流す役割も担っています。細菌感染を防ぐ抗菌成分も含まれています。
特徴: 24時間365日、絶えず分泌されています。
反射性分泌の涙(反射性涙液)
役割: 目にゴミや異物が入った時、玉ねぎの刺激、強い光、煙、乾燥などの外部からの刺激に対して反射的に分泌される涙です。異物を洗い流し、目を保護する役割があります。
特徴: 大脳辺縁系にある扁桃体などを介して、刺激に反応して分泌されます。
情動性分泌の涙(感情性流涙液):
役割: 悲しい、嬉しい、感動したなど、感情が高ぶった時に流れる涙です。人間特有のもので、ストレスを軽減する効果があると言われています。ストレスホルモンであるコルチゾールなどが涙の中に排出されることで、泣いた後に気分がすっきりするとされています。
特徴: 自律神経(特に副交感神経)が関係しており、交感神経が優位な怒りや悔しい時の涙はナトリウムが多くしょっぱい傾向があり、副交感神経が優位な嬉しい時や悲しい時の涙は水っぽく薄い味の傾向があると言われています。
涙の生成と排出のメカニズム
涙は主に以下のプロセスで生成され、排出されます。
生成:
涙腺: 上まぶたの外側にある主涙腺と、結膜に点在する副涙腺で血液を原料に涙が作られます。
・マイボーム腺: まぶたの縁にあるマイボーム腺から油分が分泌されます。
・杯細胞: 角結膜にある杯細胞からムチンが分泌されます。
分布: 涙腺から分泌された涙は、まばたきによって目の表面全体に均一に広がり、涙の膜を形成します。この涙の膜は、油層、水層、ムチン層からなる3層構造です。
排出:
・目の表面を潤した涙の約10%は蒸発します。
・残りの涙は、目頭の上下にある「涙点」と呼ばれる小さな穴に吸い込まれます。
・涙点は「涙小管」につながっており、さらに「涙嚢(るいのう)」という涙を一時的にためる袋を通り、「鼻涙管(びるいかん)」を通って鼻腔(鼻の奥)へと排出されます。
・泣いた時に鼻水が出るのは、この涙が鼻に流れているためです。
このように、涙は単なる水ではなく、様々な成分と役割を持つ複雑な液体であり、私たちの目の健康と心の状態に深く関わっています。
ドライアイについて
ドライアイは、目の表面を覆う涙の量や質に異常が生じることで、目の不快感や視機能の異常を引き起こす病気です。
近年、パソコンやスマートフォンの使用増加に伴い、ドライアイに悩む人が増えています。
ドライアイの症状
ドライアイの症状は多岐にわたります。主な症状は以下の通りです。
・目の乾き
・目の疲れ
・目のゴロゴロ感、異物感
・目の痛み
・目の充血
・かすみ目、見えづらさ(視機能異常)
・光をまぶしく感じる
・理由もなく涙が出る(反射性分泌によるもの)
・目やにが出る
・目が重たい感じがする
・目が開けにくい
これらの症状は、涙が目の表面に均等に行きわたらず、角膜に傷ができてしまうことで生じます。
ドライアイの原因
ドライアイの原因は様々ですが、主に以下のものが挙げられます。
・まばたきの減少: パソコンやスマートフォンなどを長時間見続けることで、まばたきの回数が減り、涙が蒸発しやすくなります。
・空気の乾燥: エアコンの効いた部屋や乾燥しやすい冬などは、空気が乾燥し、目の水分も蒸発しやすくなります。
・コンタクトレンズの装用: コンタクトレンズは涙を吸収したり蒸発を促したりするため、ドライアイになりやすいとされています。
・加齢: 年齢とともに涙の分泌量や質が低下します。
・不規則な生活: 睡眠不足や夜型の生活は、生理機能を乱し、目が乾きやすくなります。
・薬剤の副作用: 一部の精神安定剤や血圧降下剤などが涙の分泌を減らすことがあります。
・全身の病気: シェーグレン症候群などの自己免疫疾患の症状としてドライアイが現れることがあります。
・マイボーム腺機能不全 (MGD): まぶたの縁にあるマイボーム腺という油分を分泌する腺の機能が低下すると、涙の油分が不足し、涙が蒸発しやすくなります。近年、ドライアイの多くがこのMGDを伴うことが分かっています。
ドライアイの診断
ドライアイの診断には、眼科での検査が必要です。
・BUT(涙液層破壊時間)検査: 目を開いてから涙の膜が破壊されるまでの時間を測ります。5秒以下だとドライアイの疑いがあります。近年、涙の「量」よりも「安定性」を重視するようになっています。
・シルマーテスト: 下まぶたにろ紙を挟み、5分間で濡れる長さを測り、涙の分泌量を調べます。5mm以下だとドライアイの疑いがあります。
ドライアイの治療法
ドライアイの治療は、症状や原因によって様々ですが、主に以下の方法があります。
点眼治療
・人工涙液、ヒアルロン酸製剤: 涙を補給し、目を潤します。
・水分の分泌促進薬、ムチンの分泌促進薬: 目の中から水分やムチン(涙を目の表面にとどめる働きを持つ)の分泌を促します。
・ステロイド点眼液: 炎症が強い重症のドライアイに用いられることがあります。
涙点プラグ: 涙の排出口である涙点に栓をして、涙が目の表面に留まるようにする治療法です。
マイボーム腺の治療
・温罨法(おんあんほう): まぶたを温めることで、マイボーム腺の詰まりを改善し、油分の分泌を促します(ホットアイマスクなど)。
・マイボーム腺圧出: 医療器具でまぶたを圧迫し、固くなった脂を排出します。
・IPL治療: 光を照射することでマイボーム腺の詰まりを溶かし、油の分泌を良くする最新の治療法です。これは自由診療となる場合があります。
その他
・保護メガネ: 涙の蒸発を防ぐために使用します。
・血清点眼: 重症のドライアイ患者さんに対し、自身の血液から作られる点眼液が用いられることもあります。
日常生活での対策
ドライアイの症状を和らげ、予防するためには、日常生活での対策も重要です。
・意識的なまばたき: パソコンやスマートフォンの使用中は、意識的にまばたきの回数を増やしましょう。
・目を休める: 定期的に画面から目を離し、遠くを見るなどして目を休憩させましょう。
・加湿: 部屋が乾燥しないように、加湿器を使用したり、エアコンの風が直接当たらないようにしたりしましょう。室内の湿度は50%程度が目安です。
・コンタクトレンズの適切な使用: 長時間装用を避け、目の状態に合ったレンズを選び、必要であればメガネを併用しましょう。
・目の温め: ホットアイマスクなどでまぶたを温めることは、マイボーム腺の機能を改善し、涙の質を向上させるのに役立ちます。
・市販の目薬: 防腐剤不使用の人工涙液タイプの目薬を選ぶと良いでしょう。ただし、症状が改善しない場合は眼科を受診しましょう。
・ストレスケア: ストレスもドライアイに影響を与えることがあります。
ドライアイは慢性的な疾患であり、完治が難しい場合もありますが、適切な治療とセルフケアを継続することで、症状を緩和し、生活の質を向上させることができます。目の不快感が続く場合は、眼科専門医に相談することをおすすめします。
近年、パソコンやスマートフォンの使用増加に伴い、ドライアイに悩む人が増えています。
ドライアイの症状
ドライアイの症状は多岐にわたります。主な症状は以下の通りです。
・目の乾き
・目の疲れ
・目のゴロゴロ感、異物感
・目の痛み
・目の充血
・かすみ目、見えづらさ(視機能異常)
・光をまぶしく感じる
・理由もなく涙が出る(反射性分泌によるもの)
・目やにが出る
・目が重たい感じがする
・目が開けにくい
これらの症状は、涙が目の表面に均等に行きわたらず、角膜に傷ができてしまうことで生じます。
ドライアイの原因
ドライアイの原因は様々ですが、主に以下のものが挙げられます。
・まばたきの減少: パソコンやスマートフォンなどを長時間見続けることで、まばたきの回数が減り、涙が蒸発しやすくなります。
・空気の乾燥: エアコンの効いた部屋や乾燥しやすい冬などは、空気が乾燥し、目の水分も蒸発しやすくなります。
・コンタクトレンズの装用: コンタクトレンズは涙を吸収したり蒸発を促したりするため、ドライアイになりやすいとされています。
・加齢: 年齢とともに涙の分泌量や質が低下します。
・不規則な生活: 睡眠不足や夜型の生活は、生理機能を乱し、目が乾きやすくなります。
・薬剤の副作用: 一部の精神安定剤や血圧降下剤などが涙の分泌を減らすことがあります。
・全身の病気: シェーグレン症候群などの自己免疫疾患の症状としてドライアイが現れることがあります。
・マイボーム腺機能不全 (MGD): まぶたの縁にあるマイボーム腺という油分を分泌する腺の機能が低下すると、涙の油分が不足し、涙が蒸発しやすくなります。近年、ドライアイの多くがこのMGDを伴うことが分かっています。
ドライアイの診断
ドライアイの診断には、眼科での検査が必要です。
・BUT(涙液層破壊時間)検査: 目を開いてから涙の膜が破壊されるまでの時間を測ります。5秒以下だとドライアイの疑いがあります。近年、涙の「量」よりも「安定性」を重視するようになっています。
・シルマーテスト: 下まぶたにろ紙を挟み、5分間で濡れる長さを測り、涙の分泌量を調べます。5mm以下だとドライアイの疑いがあります。
ドライアイの治療法
ドライアイの治療は、症状や原因によって様々ですが、主に以下の方法があります。
点眼治療
・人工涙液、ヒアルロン酸製剤: 涙を補給し、目を潤します。
・水分の分泌促進薬、ムチンの分泌促進薬: 目の中から水分やムチン(涙を目の表面にとどめる働きを持つ)の分泌を促します。
・ステロイド点眼液: 炎症が強い重症のドライアイに用いられることがあります。
涙点プラグ: 涙の排出口である涙点に栓をして、涙が目の表面に留まるようにする治療法です。
マイボーム腺の治療
・温罨法(おんあんほう): まぶたを温めることで、マイボーム腺の詰まりを改善し、油分の分泌を促します(ホットアイマスクなど)。
・マイボーム腺圧出: 医療器具でまぶたを圧迫し、固くなった脂を排出します。
・IPL治療: 光を照射することでマイボーム腺の詰まりを溶かし、油の分泌を良くする最新の治療法です。これは自由診療となる場合があります。
その他
・保護メガネ: 涙の蒸発を防ぐために使用します。
・血清点眼: 重症のドライアイ患者さんに対し、自身の血液から作られる点眼液が用いられることもあります。
日常生活での対策
ドライアイの症状を和らげ、予防するためには、日常生活での対策も重要です。
・意識的なまばたき: パソコンやスマートフォンの使用中は、意識的にまばたきの回数を増やしましょう。
・目を休める: 定期的に画面から目を離し、遠くを見るなどして目を休憩させましょう。
・加湿: 部屋が乾燥しないように、加湿器を使用したり、エアコンの風が直接当たらないようにしたりしましょう。室内の湿度は50%程度が目安です。
・コンタクトレンズの適切な使用: 長時間装用を避け、目の状態に合ったレンズを選び、必要であればメガネを併用しましょう。
・目の温め: ホットアイマスクなどでまぶたを温めることは、マイボーム腺の機能を改善し、涙の質を向上させるのに役立ちます。
・市販の目薬: 防腐剤不使用の人工涙液タイプの目薬を選ぶと良いでしょう。ただし、症状が改善しない場合は眼科を受診しましょう。
・ストレスケア: ストレスもドライアイに影響を与えることがあります。
ドライアイは慢性的な疾患であり、完治が難しい場合もありますが、適切な治療とセルフケアを継続することで、症状を緩和し、生活の質を向上させることができます。目の不快感が続く場合は、眼科専門医に相談することをおすすめします。