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Topic 16. 親心が招いた「子どもの不幸」


多くの場合、子どもは自分自身では目の異常に気づくことができません。そのため、親は子どもの目の健康を守るために、普段からよく子を観察する必要があります。今回は、「小学生でメガネをかけさせるのはかわいそう」という理由で裸眼のままにしておくと、子どもにどのような影響が生じるかについて、眼科医が解説します。

見えづらい状態で生活していると、視覚機能に悪影響

(※画像はイメージです/PIXTA)

発達途上にある子どもの目には、見る環境が大きく影響してきます。いろいろな物を見る経験を通して視覚機能を成長させていきますが、それには見ている物にきちんとピントが合っていることが何より重要です。

なぜなら、ぼやけた像を脳に送り続けていると、物の認識をしづらくなることで脳が活発に働かなくなってしまうからです。これが、視覚機能の発達を妨げることとなり、一生見えづらい状態で過ごすことにもつながります。

その代表例として挙げられるのが“メガネ”です。子どもの視力が低下してくると、メガネが必要になります。そのとき「小さい子にメガネをかけさせるのは良くない」とか「小学生でメガネをかけさせるのはかわいそう」という声が、親や祖父母から聞こえてきます。

しかし、見えづらい状態で生活していることのほうが、子どもの目に負担をかけるばかりか、かえって視覚機能にも悪影響を与えることになります。

視覚は、環境を認識する情報の約80%を占めているため、もしも病気やケガなどで視覚に問題が生じれば、外界から得る情報量は一気に減少してしまいます。

それにもかかわらず、見えづらい状態を改善しないままでいれば、子どもは「正しく見えている状態」に慣れていないため、違和感をもつことはありません。これが、ますます視覚機能の発達にブレーキをかけることとなります 。

見えづらい状態は、例えば授業中に黒板の文字が読めない状況をつくり出し、それがストレスとなって授業に集中できない事態を招きます。これが学業の低下につながりますから、こうしたことが起こるほうが子どもにとっては不幸であり、かわいそうなのではないでしょうか。

目に合ったメガネをかければはっきり見えるようになることで、授業にも集中できるようになります。これが視覚機能の発達や、見えないことで生じるストレスを軽減させることにもなるでしょう。

このようなことから、目の発育を促すためにも、視力を補うために必要であるならメガネをかけ、はっきり見えるようにすることが大事です。正常な目の発達によって目からの情報を正しく受け取ることが、健やかな知的・身体的発達にもつながります。

目は機械ではないので取り換えが利きません。悪くなっても、それを一生使うしかないのです。少しでも良い状態を保って目を使い続けるためには、その基盤をつくる子どもの時期にしっかりとケアをしておく必要があります。
この時期に子どもの目の成長を促す適切な対策を講じておくことが、将来の「見る力」を育てて「見える目」を子どもに授けることにつながります。

では、子どもにメガネをかけさせるタイミングは、いつが良いのでしょう。

これは、学校健診などを利用しながら検討するのが良いと思われます。その目安としては、裸眼視力が0.7以下になったときに検討することです。

小学生までは「コンタクトレンズ」を勧められない理由

一般的には裸眼視力が低い子どもに対して、小学生まではメガネで矯正することを適応とし、コンタクトレンズの使用は勧められていません。なぜかというと、子ども自身でコンタクトレンズの管理ができないからです。

コンタクトレンズは種類によっては洗浄をしたり、使い捨てであっても自分で目に装着したり外したりしなければなりませんから、小学生までは正しく使うことが難しいと判断されています。

しかし、中学生になれば目の成長も完成していることもあり、自分で管理できるとしてコンタクトレンズも適応となります。これによって部活でスポーツをしている男子やおしゃれを気にする女子では、コンタクトレンズを希望するケースが増えています。

ただ、メガネと違って直接目に装着するコンタクトレンズは、正しく使用しなければトラブルのもととなります。実際に、長時間の装着、洗浄不足、使用期限の超過などが原因で、目の充血や異物感、痛みなどの症状を訴える中高生が増えています。自分で管理できるはずなのに、きちんとルールを守れていないのが現状です。

まず、洗浄が不十分であると、レンズに付着した細かいゴミなどが取り除かれていないため、目を傷つけてしまいます。小さなキズであれば、本来は自己治癒力によって数日のうちに修復されます。

しかし、コンタクトレンズを使用し続けていると、キズはいつまでも治らずに慢性化し、炎症を起こしやすくなります。レンズに花粉が付着し、まぶたに触れ続けていればアレルギー性結膜炎を起こすこともあります。

これらは使用する側の問題ですが、コンタクトレンズ自体に問題があることも少なくありません。例えば、家にいながら手軽に購入できる通販はとても便利ですが、眼科を受診せずに自己判断でコンタクトレンズを通販で購入すると、なかには材質に問題がある粗悪な製品を手にすることがあるからです。

特に海外製品の場合は、温度管理がされていない船便で届くケースが見受けられます。コンタクトレンズは薄いものですから、温度が高くなると日本に届くまでの間にはレンズが伸びて変形してしまいます。これがカラーコンタクトレンズになると、色素が溶け出してしまうこともあるのです。こうした製品を知らずに目に装着すれば当然、炎症が起こって角膜障害や結膜炎などの原因になります。

筆者のもとにも、カラーコンタクトレンズが原因で角膜炎を起こした中高生が何人か受診しに来ています。ひどい患者さんでは治るまでに半年以上もかかり、その間はコンタクトレンズを使用できなくなりました。

国内で販売されるコンタクトレンズは、日本の法律によって厳しく品質や有効性、安全性が確認されています。けれどもインターネットで個人的に輸入したり、販売されている製品では、日本が定めた基準に則っていないものがあり、安全性の保証もありません。
コンタクトレンズは、視力(度数)や角膜のカーブの具合、目の病気の有無、涙の量などの個人差を考慮して選ぶ必要があります。これらは眼科でなければ、きちんと調べることはできません。自分の角膜のカーブにピッタリと合ったコンタクトレンズを選ばなければ、十分に視力が出ませんし、角膜にキズがつくなど目の障害を引き起こす原因にもなります。

ですからコンタクトレンズを初めて使用するときや、度数が合わなくなって新たに購入するときには、必ず眼科を受診して処方箋を出してもらうことが重要です。その際、医師からレンズの正しい使い方を指導してもらい、それをきちんと実践することが、本人の目を守ることにつながります。

そして、コンタクトレンズを装着していても見えづらくなったときは、自覚症状はなくても角膜が傷ついていないかを確認する意味でも、眼科を受診する習慣をつけるとよいでしょう。


星合繁
ほしあい眼科院長