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Topic 55. 高齢者が見えにくい色とは?


総人口が減少しているのにもかかわらず、65歳以上の高齢者は増加する一方の日本。

その中で総人口における高齢者の割合は28.1%となり、過去最高となりました。

「超高齢化社会」である今日、国内でビジネスを行う際には、高齢者の感覚を認識しておく必要があります。

今回は、感覚の一つである色覚について、高齢者はどのような見え方をしているのか、また先天色覚異常の場合と色覚が異なるのかをご紹介します。

高齢者はどのように色が見えるのか
高齢者と若者では色の見え方が違うのをご存知ですか?

例えば30代との見え方の違いを比較してみましょう。

高齢者の場合、若者が見えている色の上に黄色~褐色のベールを被せた色に見えています。

そのため、以下のように見えてしまうのです。
若者が見えている色 高齢者が見える色
青色・青紫色 濃いグレー
茶色・黒色・紺色・紫色・濃い青色・深緑色
薄紫色 白色
黄色と白色 区別がつかない
高齢女性で髪色を薄紫色に染めている人を見かけませんか?

色覚の観点からいえば、高齢者は薄紫色が白色に見えています。

そのため諸説ありますが、本人は綺麗な白髪頭になっていると思っているのではと言われています。
なぜ高齢者は色覚が変化するのか
年齢を重ねると水晶体(目のレンズ)は老化するだけでなく、紫外線により濁り始めます。

水晶体の老化は40代から進み、透明から黄色、褐色へと徐々に変化をします。

80代になると、水晶体は茶色になり、まるで茶色のレンズのサングラスを通して色を見ているようになるのです。

透明から黄色に着色された水晶体は、短波長の光の透過率を減少させます。

その結果、青色の光が到達しにくくなり、色の識別能力が落ちてしまうのです。

そのため、目から見える世界が段々と黄色~褐色、茶色がかって見えてくるようになります。

ただし、水晶体が黄色に変化することは白内障という病気でもあるため、手術をすることで改善することも可能です。
高齢者が見えにくい色は何色?
水晶体の色が変化することで、若い頃に見えた色が段々と違う色に見えてきます。

実際のところ、色覚変化は突然現われるものではなく、自分でも「見えにくい」と認識することがないくらい自然にやってくるのです。

公益財団法人 色彩検定協会が高齢者へ向けて「過去1年において、色の見えづらさや色の間違いに気付くことはあったか」というアンケートを行いました。

それによると、高齢者の93%は全く気付くことはなかったという回答結果となり、ほとんどの高齢者は色覚の変化に自覚はありませんでした。

自覚があった残りの7%の高齢者の多くが、自動車運転中の交通事故などで、信号の色が自分の認識と異なっていたというエピソードにより自覚したそうです。

他にもガス火による事件も起きています。

水晶体が黄色に変化したことから、青色などの寒色系は見えにくい傾向にあるためです。

そのため強火であるのにもかかわらず、ガステーブルの色が濃いグレーや黒色などであることから、青色の火が見えづらく、火の強さがそれほど大きくないと判断したと思われます。

その結果、作業中にエプロンや上衣に誤って火がついてしまう事故が多数起きているそうです。

青色以外にも、年代や性別によって、以下の色は見えにくい色だと言われています。

高齢者が認識しにくい色使いはあるのか
歳を重ねると、若い頃に見えていた微妙な色の濃淡の違いもわかりづらくなります。

例えば、以下の色の組み合わせは明暗差やコントラストがあまりないため、高齢者にとって全てが同じ色に見えてしまう傾向にあるのです。

高齢者が認識しやすい色・好きな色
では反対に、高齢者が認識しやすい色や好きな色はどのような色なのでしょうか。

鮮やかな赤色やオレンジ色などの暖色系の色は、より濃い色味となるため、認識しやすい色だといえます。

また、男女共通して緑色が好きだそうです。

緑色の場合、高齢者の目を通しても色の変化が少ないため、緑色が好まれるのではないでしょうか。

なお、男女で好みの色は異なり、男性の場合は緑色に加えて青色、女性の場合はピンクとオレンジが好みだそうです。

若者の見え方で言うと、男性は緑色と黒色、女性はオレンジ色であり、はっきりと認識することができる色が好まれるように思われます。
高齢者が認識しやすい色使い
明暗差やコントラストがあまりない色使いの場合は、全てが同じ色に見えてしまいます。

そのため濃い色や薄い色同士の組み合わせは、高齢者向けの案内や商品などを制作する場合には注意が必要です。

反対に明暗差やコントラストが大きい色使いであれば、認識しやすい傾向にあります。

そのため、以下の色の組み合わせであれば高齢者でも認識しやすい色の組み合わせといえるでしょう。

先天色覚異常との違い
色覚異常には2タイプあります。

先天色覚異常と後天色覚異常です。

年齢を重ねることで起こりうる色覚異常は後天色覚異常です。

後天色覚異常では、視力の低下とともに視野に異常が起きることが分かっています。

高齢者のような、加齢による水晶体の老化(白内障)の他に、網膜疾患や緑内障などがあり、病気の疾患度合いによっては両眼で左右差がありますが、治療を行うことにより、治る場合もあります。

反対に先天色覚異常は、生まれもったものであるため、治療を行っても治ることはありません。

両眼で左右差はなく、視力や視野といった他機能についての異常は全くないそうです。

このように、色覚異常のタイプが全く異なることから、色の見え方も異なります。

先天色覚異常の人が、区別がつきにくい一部の色の組み合わせは以下のとおりです。

カラーユニバーサルデザイン
このように色の見え方に多様性があることから、全ての人に正しい情報が伝わるように配慮されたデザインが注目されています。

これを「カラーユニバーサルデザイン」といいます。

現在までに、一部の取り組みではありますが、公共機関の表示板や印刷物を、カラーユニバーサルデザインの考えのもとに刷新している地方自治体もあります。

例えば濃い赤色は黒色やこげ茶色と混同しやすいため、認識しやすいオレンジ色を使用しているところがあります。

また、文字を使用する時には明暗差やコントラストを大きくするために、背景を白色にしたり、文字のまわりに白色の縁取りをする取り組みも行われています。

他にも、薄い色同士や濃い色同士の組み合わせは避けたり、写真の上に文字を重ねるときには、文字の部分に下地を付けるなどを行っているようです。

しかし、カラーユニバーサルデザインは色覚異常の人のためだけに使われているわけではありません。

カラー印刷技術の発達により、多色使いが一般的になった今、一貫性のない色彩設計が多くみられます。

このカラーユニバーサルデザインを行うことにより、伝えたい情報の優先順位を考え、その情報を受取る全ての人が感じる印象を考慮しながらデザインすることで、誰もが理解することができるデザインとなるのです。

つまりは、色覚異常の人だけではなく、全ての人にとって価値のあるデザインといえるでしょう。
高齢者が見えにくい色とは?見分けがつきにくい組み合わせもご紹介! まとめ
昨今、ユニバーサルデザインを取り入れている商品は多く見られるようになりました。

しかし、カラーユニバーサルデザインに配慮された商品は、まだ一般的ではありません。

先天色覚異常については、日本人男性の場合、20人に1人、日本人女性の場合では500人に1人と言われています。

今後、高齢者だけではなく、先天色覚異常の人のためにも、カラーユニバーサルデザインに配慮した商品や設備が一般的になることを願っています。