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Topic 56. 見えにくい、と感じたら「網膜色素変性症」にも注意を


網膜色素変性症とは

中高年に多い目の病気といえば、白内障や緑内障、それに加齢黄斑変性症などがよく話題になります。しかし、よく似た症状でありながら、網膜色素変性症についてはあまり知られていません。
この病気は原則として進行性のため、知らずに放置していて悪化させてしまうケースが少なくありません。早めにケアをすることで、進行を遅らせることもできるので、網膜色素変性症について知っておきましょう。


<網膜色素変性症とは>
網膜色素変性症は、網膜の視細胞に障害が起こり、うまく機能しなくなることから始まる病気です(※1)。一般的には、薄暗いところでものが見えにくくなり、やがて視野が少しずつ狭くなり、視力も低下する…というように進行していきます。さらに悪化すると社会的失明(矯正視力が0.1以下の状態)になったり、少数ですが光を失うこともあります。
<原因や発症率は>
原因としては、遺伝要因が大きいとされています。ただし、遺伝にもいろいろなタイプがあり、「親がこの病気だったら子どももなる」というわけではありません(ミニコラムをご参照ください)。
発症率は4000人~8000人に1人と推定されています。かなり幅がありますが、これは自分が網膜色素変性症とは気づかず、受診していない人も多いためです。また中高年に多くみられますが、若い頃に発症する例も少なくありません。

<治療方法は>
網膜色素変性症は原因が特定されず、有効な治療法もまだありません(※2)。そのため難病(特定疾患)の1つに指定されています。難病と聞くと、特殊な病気で自分には関係ないと思いがちですが、この病気はだれにでも起こりえるので注意が必要です。
有効な治療法はまだありませんが、ビタミンAなどの服用のほか、ロービジョンケア(低視力の人を補助するための器具の使用や訓練など)によって、進行を遅らせたり、日常生活をサポートする方法が行われています。


(※1)網膜は、カメラのフィルムに例えることができます。目に入った光は網膜で焦点を結び、その情報が脳に送られることで映像として認識されます。網膜には光を感知する視細胞が1億個以上あります。

(※2)将来の治療法として、遺伝子治療、網膜移植などの研究が進められています。
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こんな症状に注意を

網膜色素変性症の症状や進行程度は、人によってかなり違いがあります。ここでは、早期受診の参考になる一般的な症状をご紹介します。
網膜色素変性症の典型的な症状は、夜や暗いところでものが見えにくい「夜盲、鳥目」と、視野が狭くなる「視野狭窄(きょうさく)」です。これは網膜の視細胞のなかでも、暗い場所での識別や視野の広さに関係している、杆体(かんたい)細胞に障害が起こるためです。
2つの症状のうちでは、どちらかといえば夜盲・鳥目が先に起こり、室内の薄暗いところにあるものが識別しにくかったり、夜の車の運転がつらくなったりといった症状がみられます。加齢やほかの目の病気でもよく似た症状がみられますが、網膜色素変性症は両眼性で、少しずつ進行していくので、まず受診して検査を受けることが大切です。
最近の都会では明るい場所が多いため、夜盲・鳥目の症状になかなか気づかず、視野が狭くなってから初めて「おかしい」と感じる人も少なくありません。
視野が狭くなると、歩いていて人とぶつかりやすい、小さな段差に気づかずつまずく、落としたものを探しにくい、車の運転で左右の車に気づきにくい、といった症状がみられるようになります。いずれも分かりやすい症状なので、この場合も早めに受診することが大切です。
視野狭窄が進むと、視野の周辺部(左右・上下)が次第に見えにくくなり、中心部付近だけしか見えない状態になります。この段階になると、視力もかなり低下していることが少なくありません。ここでいう視力とは矯正視力のこと、つまり眼鏡などで矯正しても低視力の状態をいいます。



症状の進行状態を知っておく
網膜色素変性症は、進行速度にも大きな個人差がみられます。
一般的には進行はとてもゆっくりしたペースで、高齢になってもあまり不便を感じずに生活できる方もいます。その一方で、若年期や中年期に視力低下を起こす例もあります。したがって、夜盲・鳥目や視野狭窄と思われるような目の異常を感じたら、まず眼科を受診して検査をし、自分の進行状態を知っておくことが大切です。
検査には、一般的な視力検査のほか、眼底検査(眼底の色素沈着や視神経の萎縮を調べる)、暗順応検査(夜盲や鳥目の程度を調べる)、網膜電図(光の刺激に対する電気反応から病気の可能性を調べる)、視野狭窄検査(視野の狭まりを調べる)などがあります。通常の視力検査だけではなく、定期的にこうした検査を受けることで進行状態を知ることができます。
治療については、病院によって暗順応の改善薬やビタミンAを中心としたビタミン剤などが処方されます。ビタミンAは、一部の研究では効果があるとされていますが、まだ実証されたわけではありません。とくに自己判断でサプリメントのビタミンAを大量に服用すると、副作用の危険性もあるので、医師と相談するようにしましょう。
網膜色素変性症は、白内障や緑内障を併発しやすく、症状をいっそう悪化させることがあります。この場合には白内障や緑内障を治療することで、症状全体も軽減する可能性があります(目の状態によって異なるので、医師とよく相談してください)。
また、網膜色素変性症が進行すると失明にいたる…とする解説をときどき見かけます。実際には、社会的失明(矯正視力が0.1以下)が多く、難病情報センターによれば「医学的失明になる方はむしろ少ない」とされています。もちろん社会的失明にもならないほうがいいのは当然なので、そのためにも早い段階から受診して、下記のようにロービジョンケアなどに取り組むことが大切です。




ロービジョンケアとは
病気やケガで視力が低下したり、視野が狭くなると、日常生活に支障をきたすようになります。とくに文字を読むときや外出時に、不便さや困難を感じることが多くなります。
日常生活の質を少しでも高めるためには、残された視力や視野を最大限に活用する工夫やサポートが必要です。そのための医療や福祉を、ロービジョンケアといいます(※3)。
具体的には、ロービジョンケア・グッズの使用、グッズに慣れるための練習、日常生活での注意などがあります。
ロービジョンケア・グッズには、文字を見るための拡大・縮小レンズ類(拡大鏡、弱視眼鏡、プリズムなど)や拡大読書機、タイポスコープ(黒地にスリットの入った、文字を読みやすくする器具)、主に外出時に使用する遮光眼鏡や白杖などがあります。
遮光眼鏡はふつうのサングラスとは違い、目のなかで散乱しやすい青色の光だけを遮断し、まぶしさを軽減する眼鏡です。網膜色素変性症になると光をまぶしく感じることが多く、外出時には遮光眼鏡が必要になることがあります。
こうしたグッズを使用した文字を読む練習や、外出時に人とぶつからないための歩行訓練なども、ロービジョンケアの一つです。
また網膜色素変性症は、強い日差しの下に長時間いると症状を悪化させやすいとされています。そのため外出時には、サンバイザーや大きなツバのある帽子の着用も必要です。こうした予防や改善のための情報の提供や指導も行われます。
ロービジョンケア施設は全国にあるので、下記の機関のホームページにアクセスするか、眼科医に相談してください。なお各地の福祉センターでもロービジョンケアを行う施設がありますが、障害者手帳を必要とすることもあるので、事前に確認しておくようにしましょう。
網膜色素変性症にはまだ有効な治療法がなく、しかも進行性のため、視力の低下にともなって患者さんには戸惑いや焦り、いらだちなどが生じやすくなります。しかし、ストレスを受けると症状が悪化しやすい一面もあるので、ロービジョンケアに積極的かつ忍耐強く取り組み、日常生活を少しでも快適にすごそうとする姿勢が大切です。ホームページを通じて、同じ病気の患者さんの話を知ったり、情報を得たりすることも役に立ちます。

(※3)ロービジョンとは低視力を意味します。目の病気では、糖尿病性網膜症、緑内障、網膜色素変性症などが、ロービジョンになる典型的なものです。高齢化にともない、いずれの病気も増加傾向にあるので、ロービジョンケアの役割は非常に大きなものがあります。